子育てについての情報を集めていると、育児書やネットなどでよく目にする機会がある「自己肯定感」。
精神的な幸福度をはかるうえでも、「自己肯定感」は深く関係してきます。日本人は世界的に見ても自己肯定感がとても低く、世界幸福度ランキングにおいても56位(2021/6時点)と毎年低い位置付けを推移しています。
ユニセフによる世界中の子どもを対象にした総合的な幸福度ランキングでは38か国中で20位と中間層にあたりますが、分野ごとにみてみると身体的幸福度は2位と大きな差をつけて1位にもかかわらず、精神的幸福度の面では37位と最下位に近く、非常に両極端といえます。
日本国内ではまだまだ自己肯定感への認識が低いため、自己肯定感が低いことによる子どもへの影響を知らない親も多数いるのが現状です。
そんな中で子ども達の自己肯定感を高めていくには、環境や教育において関わる人達の知識、サポートが必要不可欠になっていきます。
改めて、子どもに対する言葉かけや態度など振り返ってみましょう。
自己肯定感とは?
自分自身に対して積極的に肯定的な評価をできる感情であり、自分は生きている価値があると認める気持ち、良いところも悪いところも含めありのままの自分を受け入れ認める感覚。
『自信・自己効力感・自尊心・自己への思いやり』
これらの言葉も自己肯定感の類似語にあたります。自分の存在や価値を肯定的にとらえられるだけで、毎日はとても明るくエネルギッシュなものへと変わります。反対に、自分に対して否定的な気持ちが強く、ネガティブな評価ばかりになってしまうと新しい物事にも積極的に取り組めませんし、憂鬱な気分が続くでしょう。
幼い子どもでもこのような感覚を持つの?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、本人に自覚がなくとも行動や言葉にして自己肯定感は顕著に表れます。
日々成長していく中で「初めての逆上がり」「トイレトレーニング」のように新たな挑戦の場面はなんども訪れます。
子ども達も初めて取り組む問題に、『自分は出来るのか?』『失敗したらどうしよう?』『1人じゃこわいなぁ。』と不安や心細さと戦っています。そこで「自分なら出来るはず!」背中を後押ししてくれるのが自己肯定感です。
ですが、幼い子どもの自己肯定感は自然と高まっていくというより、親や周りの大人たちの言葉・対応によるサポートで高められます。まずは基盤となるポジティブ思考や肯定感を幼いうちに育ててあげることで、その子自身の将来の自信にもつながり、チャレンジを重ねて探究心を満たせる強さは人生を豊かにする礎になるでしょう。
- 自分の感情のコントロールでき、精神的に安定している
- また自分に生まれたい。自分の性格も、容姿のコンプレックスも受け入れられている。
- 他人と自分を比べて落ち込んだりしない。自分は自分の在り方があるし、幸せだと感じられる。
- 失敗を恐れず、もし失敗しても諦めない。自分なら出来ると信じている。
- 物事をポジティブにとらえ、意欲的で自主性や探究心が高い
- 自分や他人を思いやり、コミュニケーション能力が高い
- 自分なんて生きている価値がない、いなくなりたい。と思ってしまう。
- 周りと比べてしまう。自分の良いところが見つからない。
- 自信の無さからくる対人恐怖
- 失敗を恐れて新しいチャレンジが出来ない。
- 物事をネガティブにとらえ、無気力で流されやすい。
子どもの自己肯定感を高める!親の褒め力
生活しているとつい出来ていないことばかりが目についてしまって、あれこれ口うるさく言ってしまい、褒めるという行為はおろそかになってしまうことも。
すでに自分で出来ることや自発的に動いてくれたことに関して”当たり前”が強くなってしまうと、子どもの頑張りや成長を見逃してしまいがちです。まずは子どもをよく見て、普段は流してしまっていた褒めポイントを見つけてあげられるようにしましょう。
しかし、褒め方によってはモチベーションが下がる原因になったり消極的になる可能性もあります。せっかく子どもの自己肯定感を伸ばそうと頑張っているのに知識がないばかりに子どもにとってマイナスなことをしていた、なんてことにならないよう褒める際の注意点もチェックしていきましょう。。
結果や人ではなく、過程を褒めよう
子どもがテストを持ち帰り見せてくれて、点数は高得点でした。
この場合、よくある褒め方は『いい点数とれたね!すごいじゃん!』『さすが○○ちゃん!賢いね』といった結果中心である点数や、子どもの能力などを褒める方が多いのではないでしょうか?
一見してポジティブで子どもにとっていい言葉のように思えますが、子どもの成長においていい影響ばかりとは限らないようです。
このように結果として見えている、表面的なものを褒める方が簡単で、親としてはこちらの方が褒めやすいのでついつい先のようなフレーズを使ってしまいがちです。表面的で結果重視な褒め方であっても、一時的には子どものモチベーションも上がるので効果のある言葉かけのように感じますが、望むような成果がでなかった時や結果を褒めてもらえなかった時には努力することや挑戦することをやめてしまいます。
ドゥエック博士とミューラー博士は、128人の子ども達にテストを受けさせた後にそれぞれ違う褒め方をした3グループを作り、その後に受けるテストの点や意欲的な姿勢の違いについて研究しました。
1グループは「頭がいいのね」といった能力を褒め、2グループは「諦めないで頑張ったね」とプロセス・努力を褒め、3グループは「よくできたね」と表面的にほめました。
すると、1グループと3グループはその後のテストで消極的になったり成績の低下がみられたが、努力を褒められた2グループは、最後まで意欲的な態度をとり成績の上昇まであったのです。
このことからも努力やプロセス部分にフォーカスしない褒め方は次に繋がらないだけでなく、チャレンジにも消極的で挫折する子が多かったことがわかります。
「100点がとれるように努力してたもんね、頑張ったね!」「諦めずに色々やり方を変えてみたから、答えが導き出せたんだね!」
のように、褒める際は結果や子どもの能力ではなく頑張った過程やこだわっていたところなどを意識しましょう。もし頑張っている姿を親が見る機会がなかった場合、おおげさにほめてみても「見てなかったのに…」と信頼にかけます。そんな時は子ども自身にプロセスの中で何を頑張ったのかを聞いてみるのも親子間で感想を共有できていいでしょう。
具体的に褒める
「すごい!」「いいね!」
これらの褒め方は何がどういいのか、またなにが足りなかったのか全体的に具体性に欠けています。
たとえば、仕事で資料を作成した際に「いいね」だけのコメントと「沢山の情報がわかりやすくまとめられている。量があるなか趣旨もぶれず読みやすく仕上がってるね。いい資料だ」ではどちらが自分の良かった点に気付けるでしょうか。
後者の方がこの工夫が良かったんだなと、今後の活動に活きてくるコメントではないでしょうか。
なにが良かったかわからないまま過ぎた出来事は薄れていってしまいますが、具体的なフィードバックをもらうことで記憶にも残りやすく、褒められたことによって行動の強化にもつながり、次のチャレンジに向けてのモチベーションも上がります。
努力やプロセスを具体的に伝えるのが難しい…という方は、見たままの感想を素直に伝えてみてあげて下さい。そう難しさは感じないはずです。
たとえば、絵を描いて見せてくれたら『たくさん色を使ってにぎやかな絵が描けたね』『何回もやり直して丁寧に書いていたね』『重ねて塗ると色も変わるんだね』など見たままを伝えるだけでも具体性は格段にアップします。
ひとつ気を付けてほしいのが、「いいね」「すごい」のワード自体がダメなんだ!使わないようにしなきゃ!と勘違いしてしまうことです。そう思っていないのに言いやすいから言っている状況がよくないのです。適当に言っている言葉は案外子どもにも「なんとなく言ってるだけ」と伝わってしまいます。
親の褒め方がおおげさすぎたり、過小評価されたと感じた時は学校の成績低下や気持ちの落ち込みにもつながりやすいこともわかっています。
ですが、本当に「すごい!!」と思った時には感動した気持ちや興奮をその言葉のままつたえても問題ないでしょう。感情を抑え込むことばかりを意識せず、ありのままで接することも忘れないでくださいね。
自己肯定感が低いことで起きる苦しさ
facebook、twitter、インスタグラムといったSNSは一昔前では考えられないくらいに広がり、旅行先での美しい風景や楽しいアクティビティでの1枚を載せる為だけに行動する人も増えてきました。この行動が意味するものは、ずばり承認欲求です。普段の生活では関われない他人との交流を広げられたり、笑顔になる投稿で元気をもらえたりといい面も多くありますが、自分の存在価値を感じるためのSNS利用は心を満たしているようでも苦しいものになっているはずです。
このように承認欲求は、周りからの「すごい」「いいな」と周囲からの賞賛や褒美、羨望がなければ自分に価値を見いだせなくなってしまうことですが、その行動を生む理由は自己肯定感の低さが原因になっているケースが多くあります。
周囲から「すごい」と褒められたり羨ましがられた時しか自分に価値を感じることが出来ず、自分自身での自己評価が出来なくなってしまいます。そのため外部からの評価を求め、「褒められたい」「すごいと思われたい」といった承認欲求を満たす行動をとるようになり、求めている肯定的な反応がなかった時には自分への評価は低くなってしまいます。
新しいことをする時にも、常に他人からどのような評価をうけるか気にして生きていく為、やりたいことにチャレンジする気持ちを抑えてしまったり、思い通りの行動に移せないといった心の問題による制限が増えるでしょう。
そして、親自身の自己肯定感をあげることも子どもの自己肯定感をあげることと同じくらいとても重要です。
先のSNSの話のように、周りのキラキラした子育て談を出来事を載せた投稿と正解のない子育てに四苦八苦している自分とを比べて苦しくなっている親をたくさん見てきました。誰かと比べている間は永遠に幸せは感じられません。
親も子もみんな唯一の存在です。比較ではなく尊重。頑張っている自分を褒めることも忘れずに、楽しい子育てライフを送りましょう。