子育て

自分から動ける子。その理由とは?

朝起きてから寝るまで、親の皆さんはどれだけ子どもにたいして指示を出しているでしょうか?

「歯を磨いて」「パジャマを片付けて」「着替えて」「ハンカチは持ったの?」「宿題やりなさい」「明日の準備は?」「もう寝る時間だよ」

思いつく限りでもたくさんの声をかけているはずです。年齢が大きくなればそれに比例してやらなければならないことも増えますし、自分をコントロールして物事をこなしていける子は多くはないでしょう。

なので口を出して指示を仰いだ方が早く終わりますし、親にとっての都合のいいやり方を押し付け、親の言う通りに動いてくれた方が容量よく進みスムーズなのは確かです。

ですが、今はまだ子どもだからと常に管理し指示を出してばかりいると、子どもが大人になってからの人生に大きく影響してくるかもしれません。

”今まで親に全てを管理・指示を出されていた子どもが、大きくなったら突然自分のことは自分で考え行動するようになる”なんてことは残念ながらありません。「自分で考える力がないために、常に人からの指示を待つ、流されるだけの大人になる」こんな未来があるだけです。

何をするにも練習・訓練が必要ですが主体性に関しても同じことが言えます。

主体性を育むためには子どもだけの力では難しく、最初は親の介入がかかせません。まずは基盤となる主体性の土台を親と供に作り上げ、後々子どもが自分ひとりで考え、動けるように準備してあげたいですね。

主体性とは?

主体性とは自分の意思、判断により行動できることです。

  • 状況や環境に合わせてやるべきことに優先順位を付ける判断ができる
  • 周りからの指示を待ったり流されることなく、自らの考えを軸に問題を解決しようと行動できる
  • 自分の行動に責任をもつ積極的な性質

今はなにをするべきなのか優先順位をつけ行動に移したり、問題が起きた時には解決方法を自分の力で模索し積極的に問題解決へと動き、誰かの指示や考えなしに自分の意見をもって行動する。

近年は災害が多く、社会情勢も変わりやすく、働き方改革やグローバル化が進むとても変化の多い現代社会。そんな時代を生き抜いていくためには、大人や子供といった年齢にかかわらず身に着けておきたい能力です。

ワーキングメモリ

上記の主体性に基づく行動や考えは、脳科学でいうところのワーキングメモリ(作業記憶・作動記憶)という機能にも深く関係していて、3つのグループから構成されています。

1つめは音声情報を記憶する音韻ループ。2つめは視覚的な空間的情報を記憶する視空間スケッチパッド。これら2つとそれぞれ連動して働く3つめの中央実行系は注意をむける、行動や情報の処理、短期的記憶や目標をやり遂げようと活動する能力、長期記憶の活性化も担っています。

電話番号などの数字を覚えたり、スケジュールの管理、ネットで見た気になる一文を覚えておく、のように私たちは無意識のうちに日常の様々な場面でワーキングメモリを使っています。

片付けを忘れる、宿題に中々とりかかれない、数字や漢字などの覚えが悪いなど、子どもであってもワーキングメモリをうまく機能出来ていないことが原因で周りから怒られることが増えたり、子ども自身も苦しいかもしれません。

さらにワーキングメモリは実行機能という機能の一部でもあり、実行機能はADHD(注意欠陥・多動性障害)とも関連があるとされています。ワーキングメモリ機能のトレーニングをつんだ場合には数学力・国語力の上昇や問題解決能力がアップしたとされ、知能(流動性知能)にも影響があることが研究によりわかっています。

また自己制御がうまく行えず、目標に向かって努力を続けられない・今やるべきことに取りかかれない、といった自分をコントロールできない子は、目標を達成することが出来なかったり、成果につながる努力を続けられないために、成長過程や将来においても良くない影響がでるとされています。

自分をうまくコントロール出来る子とそうでない子を比べた研究では、自己制御能力が低い子の方が30年後の健康状態が悪く、年収も低く、また犯罪を行う傾向が高くなり、人生において実行機能の重要性がよくわかる結果が出ているようです。

親の介入なしに主体性を伸ばそうとした時でも子ども個人だけである程度の成長はみられるようですが、親が介入し適切な声かけやトレーニングをつむことでさらに実行機能力があがることもわかっています。

主体性を育むための実行機能・ワーキングメモリは4歳頃から思春期にかけて上昇していき、30歳頃でピークを迎えてそこからは伸びることはありません。60歳ころからは急激にメモリ容量が減っていくため、物忘れがひどくなったり新しい物事を覚えられなくなるのはこれに起因しています。

幼児期から児童期にかけての自己制御能力・注意能力の差は思春期まで変わらず引き継がれるので、もしトレーニングをするのであれば幼いうちから始めるのがいいでしょう。

最近では子どもを育てていく上でワーキングメモリへの認知度・重要性が高まっていることもあり、楽しみながらワーキングメモリを鍛える書籍も増えています。気になる方は以下もチェックしてみてください

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